1月の本『雲を紡ぐ』
作者紹介:
本を紹介させて頂くことになりました図書館と書店に寄り道するのが大好きなsnowyです。
2022年は干支は「 壬寅(みずのえとら)」。
壬寅は、「新しく立ち上がること」や「生まれたものが成長すること」といった縁起のよさを表していています。
そんな縁起の良い年にコラムをスタートさせて頂き、
みなさんが本選びに悩んだとき、新しい本を知る窓口になれたら嬉しいです。
1月
始まりの1冊目に選んだ本はこちら。
『雲を紡ぐ』 著者 伊吹有喜 出版社 文藝春秋
作中では、「ホームスパン(homespun)」の工房と職人が描かれています。
羊毛をすべて手仕事で染め、紡ぎ、織りあげるホームスパン。
羊毛の手織物の暖かさを思い、冬に紹介したい1冊です。
家族の再生の物語であり、職人を描く「仕事」の物語でもあります。
高校生の美緒は、あることで母と口論となり、岩手盛岡に暮らす祖父のもとへ家出をしてしまう。
ホームスパンの職人である祖父の仕事を手伝ううちに、手仕事の工程や職人たちの思いにふれ、自立への一歩を踏み出していく。
家族だから気を遣ったり、話し合うことを避けてしまったり、そんな部分に共感しながら引き込まれて読みました。
自分の意志を持たなかった美緒の日々が、盛岡での暮らしで色付いてゆくようで、温かくすがすがしい読後感。
そしてなにより、盛岡の街の魅力、ホームスパンへの余韻がじんわり広がって。
工房で工程を見たり、手ざわりや風合いを確かめたいと、盛岡への旅を心に決めました。が、時を逃しています・・・。